よくある疑問
割れる・歪む・焼き上がりが変わる理由

「どうして割れたの?」「思った色にならないのはなぜ?」。陶芸をはじめたかたからよく聞かれる 3 つの疑問に、仕組みからお答えします。
このページの内容
01
これは何か
ひとことで言うと陶芸のトラブルは、大きく「割れる」「歪む」「焼き上がりが思いどおりにならない」の 3 つ。どれも、土の中の水分と熱の変化が、器のあちこちでそろわないときに起こります。
割れる
器にひびが入ったり、割れたりすることです。いつ割れるかによって、原因がちがいます。
- 乾燥中のひび:口縁のひび、取っ手の付け根のひび、底の中央に入る「S 字割れ」など
- 素焼き・本焼きでの割れ:乾燥中にできていた小さなひびが、焼いて開くことも多い。ひどいときは窯の中で破裂する
- 冷め割れ:窯から出したあと、あるいは冷める途中で、ピシッと割れる
歪む
思った形と変わってしまうことです。
- 丸くつくった器が、楕円になる
- 口縁が波打つ、片側だけ下がる
- お皿の縁が反り上がる、または垂れ下がる
- 背の高い器が傾く、へたる

焼き上がりが変わる
窯から出てきた器が、思っていたのとちがう、ということです。
- 色見本とちがう色になった。同じ釉薬なのに、器によって色がちがう
- 釉薬が縮れて、土が見えている(縮れ・はげ)
- 表面に小さな穴があいている(ピンホール)
- 表面に細かいひびのような模様が入っている(貫入)
02
なぜ起こるのか
ひとことで言うと割れも歪みも、多くは「縮み方の差」から生まれます。焼き上がりの変化は、釉薬の厚さ、土、窯の中の温度と炎のちがいで起こります。
割れる理由
- 乾き方にムラがある
- 土は乾くと縮みます。薄い口縁や取っ手は先に乾いて縮み、厚い底や胴はまだ湿っているので、引っ張り合いになってひびが入ります。底の中央に入る S 字割れは、口縁が先に乾いて縮み、まだ湿っている底の土が外へ引っ張られて起こる、代表的なひびです。風や日差しが一方からだけ当たるのも、乾き方のムラを生みます。
- 厚さにムラがある
- 厚い所と薄い所では、乾く速さも縮む量もちがいます。器の底だけが極端に厚い、といった差が、割れの大きな原因になります。
- つなぎ目の土が一体になっていない
- 取っ手やひもの継ぎ目、乾き具合のちがう土どうしをつないだ所は、縮み方がそろわず、そこから割れやすくなります。
- 水分が残ったまま焼いた
- 乾燥が足りないまま窯に入れると、中の水が水蒸気になって逃げ場を失い、器を内側から押し割ります。窯の中で破裂するのは、多くがこれです。
- 急な温度の変化
- 窯の温度を急に上げたり下げたりすると、器の外側と内側で縮み方に差が出て割れます。窯から早く出しすぎて起こる冷め割れも、その一つです。
- 釉薬が厚すぎる
- ガラスになる成分の多い釉薬を厚く掛けると、冷めるときに釉薬が大きく縮み、器ごと割れてしまうことがあります。
歪む理由
- 土は「くせ」を覚えている
- 成形のときにねじった、片側だけ強く押した、やわらかいうちに持ち上げて形がゆがんだ。そうした力の跡は、見た目では直したつもりでも土の中に残り、乾燥や焼成で縮むときにまた現れます。
- 厚さや乾き方にムラがある
- 縮み方が場所によってちがうと、形は縮みの大きいほうへ引っ張られて歪みます。日の当たる側だけが先に乾くと、その側へ傾くこともあります。
- 本焼きで土がやわらかくなる
- 本焼きの最高温度の近くでは、土の中にガラスの成分ができて、器はほんの少しやわらかくなります。そのため、広く張り出したお皿の縁や、薄くて背の高い器は、自分の重みで垂れたり傾いたりします。温度が高すぎたり、土が焼く温度に合っていなかったりすると、よけいに歪みます。
- 重さの偏り・窯の中の条件
- 取っ手など片側だけ重いと、そちらに引っ張られます。また、窯の中の温度のムラや、棚板の反りも歪みの原因になります。
焼き上がりが変わる理由
- 釉薬の厚さ
- 同じ釉薬でも、厚い所は色が濃く、薄い所は淡くなります。厚すぎると流れたり縮れたりし、薄すぎると色が出ません。
- 土の種類
- 下の土の色や鉄分が釉薬の色に影響します。色見本と土がちがえば、焼き上がりの色もちがってきます。
- 窯の中の位置と炎
- 窯の中は、場所によって温度や炎の当たり方、酸素の量が少しずつちがいます。とくに鉄や銅で色を出す釉薬は、還元の強さによって色が大きく変わります。冷め方のちがいで、つやの出方が変わることもあります。
- 縮れ・はげ
- 素焼きの器についたほこりや手の脂で、釉薬がはじかれたり、厚掛けした釉薬が焼くときに縮んで、土が見えてしまったりして起こります。
- ピンホール
- 土や釉薬の中の空気や、燃え残った有機物から出たガスが、溶けた釉薬を突き抜けて、小さな穴になります。
- 貫入
- 冷めるときに、釉薬が土より大きく縮むことで、ガラスの膜に細かいひびが入ったものです。器が割れているわけではなく、景色として楽しまれています(→ 釉薬の基本)。
03
どんな点に気をつけるのか
ひとことで言うと割れと歪みは「厚さをそろえ、土を締め、ゆっくり均一に乾かす」でかなり防げます。焼き上がりの変化は、防ぐものと、楽しむものを見分けることも大切です。
割れを防ぐために
- 全体の厚さをそろえ、底が厚く残ったら削って整える
- 器の底は、成形のあとと削りのあとに、指やへらで押さえて締める
- 取っ手やパーツは、本体と同じ乾き具合のときに、筋をつけてどべで付ける
- 乾き始めはビニールをかけて、口縁や取っ手だけが先に乾かないようにする
- 直射日光や風を避け、日陰でゆっくり乾かす
- 十分に乾いてから窯に入れる。中が空洞のものには空気穴をあける
歪みを防ぐために
- 成形中に土をねじらない。形を直すときは、少しずつ、内と外から均等に
- やわらかいうちは器を手でつかんで持ち上げず、板ごと運ぶ
- 乾燥中は、ときどき向きを変えて、全体が同じように乾くようにする
- 大きなお皿は、縁を張り出しすぎない。高台の位置や大きさで重みを支える
焼き上がりを近づけるために
- 釉薬は底からよく混ぜ、掛ける時間をそろえて、厚さを均一にする
- 素焼きの器はほこりを拭き、なるべく素手でさわらない
- 自分の使う土に近い色見本で、焼き上がりを確かめる
ただし、窯の中で起こる変化をすべて思いどおりにすることはできません。炎や灰によって思いがけない色や模様が生まれることを「窯変(ようへん)」といい、昔から大切にされてきました。同じものが二度とできないことも、手づくりの器の魅力です。
こんなときは
- 乾燥中に小さなひびを見つけたら?
- 半乾きのうちなら、ひびに沿って筋をつけ、どべを埋めてなでれば直ることがあります。ただ、ひびは焼くと開くことが多いので、早めに講師に見せてください。
- 焼く前に、形が気に入らなくなったら?
- 焼く前の土なら、水に溶かして練り直せば、また使えます。思いきってつくり直すのも一つの方法です。
- 焼き上がった器が欠けたり割れたりしたら?
- 漆で継いで金や銀で仕上げる「金継ぎ」という直し方があります。直した跡も、その器だけの景色になります。
教室では
割れや歪みは、慣れたつくり手でも起こります。うまくいかなかった器も、なぜそうなったかを一緒に考えれば、次の器づくりにきっと生きてきます。気になることは、いつでも講師に聞いてください。
写真はイメージです。