釉薬の基本

色や質感が生まれる仕組み

素焼きの茶碗を施釉ばさみではさみ、釉薬にひたしているところ

焼く前は灰色っぽい泥のような液体が、窯から出ると青や飴色のガラスに。その仕組みを知ると、色選びがもっと楽しくなります。

このページの内容

  1. 01これは何か
  2. 02なぜ必要なのか
  3. 03どんな点に気をつけるのか
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これは何か

ひとことで言うと釉薬(ゆうやく)は、焼くと溶けて器の表面をおおうガラスの膜になるもの。「うわぐすり」とも呼ばれる、やきものの衣です。

釉薬は「溶けるとガラスになる粉」

釉薬は、石や灰などを細かい粉にして水で溶いたものです。素焼きした器にこれを掛けて本焼きすると、粉が溶けて、器の表面をうすいガラスの膜がおおいます。釉薬の材料は、役割で 3 つに分けられます。

ガラスのもとになる材料
珪石(けいせき)や長石(ちょうせき)。ガラスの骨組みになるシリカ(ケイ酸)などを含みます。ただし、シリカだけでは 1,700℃を越えないと溶けません。
溶かす手助けをする材料(融剤:ゆうざい)
石灰や、木やわらを燃やした灰など。シリカを窯の温度(1,200〜1,300℃前後)で溶けるようにします。
色をつける材料(着色剤)
鉄・銅・コバルトなどの金属の成分。ほんの数パーセント入るだけで、釉薬の色ががらりと変わります。

代表的な釉薬

青緑、黒、黄緑、白、深緑、飴色、青など、色と質感のちがう釉薬を焼き付けた小さな色見本の陶片
釉薬の色見本(テストピース)。同じ形の陶片に釉薬を掛けて焼き、焼き上がりの色を確かめます。
釉薬焼き上がり色のもと
透明釉(とうめいゆう)透明でつやがある。土の色や下絵がそのまま見えるほとんど着色しない
灰釉(はいゆう)透明感のある黄緑〜淡い茶色。流れやたまりが景色になる灰に含まれるわずかな鉄など
志野釉(しのゆう)白くやわらかい、ぽってりした肌長石が主な材料
織部釉(おりべゆう)深い緑色銅
青磁釉(せいじゆう)澄んだ淡い青緑色少量の鉄(還元焼成で青くなる)
飴釉(あめゆう)つやのある飴色鉄
天目釉(てんもくゆう)・黒釉黒〜茶色のつやのある肌多めの鉄
瑠璃釉(るりゆう)深く鮮やかな青色コバルト
マット釉つやを抑えた、しっとりした質感さまざま

釉薬の掛け方

  • ずぶ掛け(浸し掛け):器を釉薬の中に数秒ひたす。全体に均一に掛けやすい、いちばん基本の方法。
  • 流し掛け・柄杓(ひしゃく)掛け:釉薬を上から流しかける。流れた跡が模様になる。
  • 掛け分け・重ね掛け:2 種類以上の釉薬を、半分ずつ掛けたり、重ねたりする。重なった所に新しい色が生まれる。
  • 筆塗り・吹き掛け:筆で塗ったり、霧状に吹きつけたりする。
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なぜ必要なのか

ひとことで言うと釉薬は、器に色とつやを与えるだけでなく、水や汚れをしみこみにくくし、なめらかで使いやすい器にしてくれます。

水や汚れから器を守る

陶器の素地には、焼いたあとも目に見えない小さなすき間が残っていて、水を吸います。釉薬のガラスの膜がそのすき間をふさぐことで、水がしみにくく、汚れやにおいもつきにくい、毎日使える器になります。表面がなめらかになるので、口当たりもよくなり、洗いやすくもなります。

色が生まれる仕組み

釉薬を掛けたばかりの白っぽい茶碗と、本焼き後に青緑色のつやのある茶碗を並べた写真
左は釉薬を掛けたばかりの状態、右は本焼き後(イメージ)。焼く前の釉薬は、焼き上がりの色とはまったくちがって見えます。

本焼きで釉薬が溶けてガラスになるとき、中に含まれる金属の成分がガラスに溶けこみ、色を生みます。色を決めるのは、主に次の 4 つです。

  1. 金属の種類:鉄なら黄・茶・黒・青緑、銅なら緑や赤、コバルトなら青、というように、金属ごとに得意な色があります。
  2. 金属の量:同じ鉄でも、少なければ淡い黄色や青緑、多くなるにつれて飴色、茶色、黒へと変わります。
  3. 窯の中の酸素の量(焼き方):鉄を 2% ほど含む釉薬は、酸素の多い「酸化焼成」では黄色に、酸素の少ない「還元焼成」では青磁の青になります。銅は、酸化焼成では緑、還元焼成では赤くなります。→ 焼成の基本
  4. 釉薬の厚さと、下の土の色:釉薬が厚い所は色が濃く、薄い所は淡くなります。鉄分の多い土の上では、色が沈んで落ち着いた色合いになります。

「貫入(かんにゅう)」も釉薬の表情

器の表面に、細かいひびのような模様が入っていることがあります。これは「貫入」といって、焼いたあと冷めるときに、釉薬が土より大きく縮むことで、ガラスの膜に細かいひびが入ったものです。器そのものが割れているわけではなく、昔から景色として楽しまれてきました。使ううちにお茶などがしみて模様が濃くなり、器が「育つ」のも楽しみの一つです。

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どんな点に気をつけるのか

ひとことで言うと「よく混ぜる」「厚さに気をつける」「底には掛けない」。焼く前の見た目では仕上がりがわからないからこそ、手順を守ることが大切です。

使う前に、底からよく混ぜる

釉薬は、時間がたつと重い成分が底に沈みます。混ぜずに使うと、上の薄い液だけが掛かり、色が出なかったり、本来とちがう焼き上がりになったりします。使う前に、底からしっかりかき混ぜましょう。

素焼きの器の表面をきれいに

素焼きの器にほこりや手の脂がついていると、その部分だけ釉薬がはじかれて、焼いたあとに釉薬が縮れたり、はがれたりします。釉薬を掛ける前に、かたくしぼったスポンジでほこりを拭き取り、器の表面をなるべく素手でさわらないようにします。

厚すぎず、薄すぎず

ずぶ掛けなら、ひたす時間は 2〜3 秒が目安です。厚く掛けすぎると、焼いたときに釉薬が流れ落ちて窯の棚板にくっついたり、縮れたり、冷めるときに器ごとひびが入ったりすることがあります。反対に薄すぎると、色が出ず、かさついた肌になります。重ね掛けした所は厚くなるので、とくに流れやすくなります。

高台と底には掛けない

本焼きで溶けた釉薬は、器と棚板をくっつけてしまいます。高台や底に掛かった釉薬は、スポンジで拭き取ります。底から 5mm ほどは拭いておくと、流れてきた釉薬が棚板に届きにくくなります。あらかじめ撥水剤(はっすいざい)を塗って、釉薬をはじかせる方法もあります。

色見本で焼き上がりを確かめる

同じ釉薬でも、土の種類や厚さ、窯の中の位置によって焼き上がりは変わります。迷ったときは、色見本(テストピース)を見て、自分の土に近い見本で選ぶのがおすすめです。

体に入れない

釉薬の原料には、口に入れたり吸いこんだりすると体によくないものも含まれます。作業中は飲み食いをせず、粉を吸いこまないようにし、作業のあとは手をよく洗いましょう。

教室では

教室には 24 種類の釉薬があり、色見本を見ながら選べます。体験の 3 回コースでは、3 回目に絵付けと釉掛けを自分で行います。

写真はイメージです。